目的:
平成17(2005)年度から平成23年度まで活動して参りました「食品研究会」につづき、「食」や「食品」の環境側面を評価する研究会として、「食品研究会Part2」は平成28年前半まで活動を続けてまいりましたが、平成28年後半より、これまでのカーボンフットプリントやウオーターフットプリント等の環境領域だけでなく、さらに農業分野を含む、一連のシステムにおける食品の付加価値化についても、研究活動をひろげていきます。
特に、近年では、食品の持つ健康機能が注目され、より身近な影響についても見える化していくニーズが高まりつつあり、一方で、消費者のニーズや意識も多様化しつつある中で、新たな受容性の高い指標づくりとそれに伴う技術やシステムの提案を目的として、横断的な要素を取り入れつつ活動を広げてまいります。
活動概要:
研究会は、2~3ヵ月に1回程度開催する予定です。当該研究会においては、ここでの成果を実社会に導入し根付かせることを大きな目標に掲げ、さまざまな分野を包括的に取り込み、産学官等の共同研究プロジェクトにも応募していきたいと考えております。また、それらの成果についてはLCA学会年会で発表し紹介することとします。
- 1.統合化指標の開発(継続)
- 今後の食品分野においては、安心・安全、また健康維持(予防医学)の観点が注目されています。これらの要素の統合化を念頭におきつつ、それぞれの食品の持つ特性を見える化できるような多様性のある統合指標の開発について議論します。ここでの見える化とは、これまでの食品研究会で議論されてきたLCAの指標を活かしつつ、同時に、DEA(データ包絡分析)やコンジョイント分析などの分析方法を取り入れ、より消費者に受け入れられやすい指標化を議論します。なお、本研研究会においては、関連分野の専門家からの意見聴取も実施したいと考えています。
- 2. 統合化指標に基づく将来の農業・食の技術やシステムの改善策の提案(継続)
- 機能性野菜の開発、品質維持の検討や食品流通、貯蔵技術など、フードロスの削減と同時に新たなマーケットの創出を目指した今後の食品の展開を考えます。近年では、いろいろな農業や食に関する技術開発やシステム開発が行われています。それらの方策について、LCA思考に基づき、全体を俯瞰した中での効果的な検証を議論したいと考えます。なお、農業生産の分野のインベントリ―作成には、まだまだ課題がありますので、その点も含め、研究実績を増やしていきたいと考えています。
- 3. IoTを意識した統合化指標の活用方策の議論(継続)
- 食を1つのシステムとして捉えた場合に、その生産活動、流通、貯蔵、調理等におけるさまざまな入出力のデータベース化の可能性を検討したいと考えます。特に、日本においては、より付加価値の高い製品について、質を重視した食品に焦点をあて、環境負荷の低減、付加価値の高い商品の安定供給、消費者の望む効用の増大を目指したさまざまなデータ要素があり、それらの活用を将来的には設計したいと考えています。前年度では、環境、栄養、味を組み合わせた複合指標を開発し、実証試験を行いました。また、来年度は、新たな付加価値を創出することが期待されている協生農法などの新しい農法へのアプローチも行えることから、本研究会で扱う指標を基軸として、実証試験を通して検討していく要因や課題を整理したいと考えています。
主な研究会構成員:
- 堂脇 清志 (東京理科大学) 主査
- 吉川 直樹 (立命館大学)
- 稲葉 敦 (工学院大学)
- 諸橋 賢吾 (東京理科大学)
- 内山 信俊 (日本製粉株式会社)
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